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繊維の番手とは? 種類や計算方法をわかりやすく解説

2023.07.28

季節ごとに気温が様々変化する日本、暖かい日は薄手のシャツ、寒い日は厚手のパーカーを着るなど、気候によって着るものを変える人は多いでしょう。

衣服選びの際は、生地の厚みや素材、強度などが重要になってきますが、これらは使用されている繊維の特徴が大きく関わっています。

なかでも生地の厚みには、繊維の太さ等を表す『番手』というものが密接に関わっています。

今回は、この繊維の番手について詳しく解説していきます。

番手とは? 

番手(ばんて)とは、簡単にいうと、糸の太さを表す単位のことです。英語では、yarn countといいます。

私たちの身近にある番手の例を挙げると、ミシン糸が挙げられます。

手芸店などで、30綿番手の厚手生地用の太い糸、90綿番手の薄手用の細い糸などが販売されているのを、見かけたことはないでしょうか。

その他、女性用のストッキングなどに記載されている『デニール』も番手の一種です。デニールの場合は、数字が小さいほど生地が薄いことを表していて、気温に合わせて厚手、薄手などの様々なデニールのストッキングが販売されています。

このように番手は、数字の大小によって、糸の太さの違いを表すことができます。

番手の種類

番手は、恒重式番手と恒長式番手の2種類に分類されます。

先ほど解説した、綿番手やデニールなども番手の種類の一つです。

糸の太さを表すだけなら、断面を測定すれば良いのでは?と考える人もいるかと思いますが、糸は断面が歪みのない円形である場合はほとんどないことから、重さや長さを利用して糸の太さを表します。

恒重式番手と恒長式番手は、名前のとおり糸の『重さ』と『長さ』が関係しており、恒重式番手は重さを、恒長式番手は長さを基準に計算します。

綿番手やデニール以外は普段目にすることが少ないですが、繊維、服飾、アパレル関係の業界では日常的に利用されている単位です。

それでは各番手について、詳しく解説していきます。

恒重式番手

恒重式番手は一般的には、綿、麻、羊毛などの天然繊維や、短繊維で利用されます。

恒重式番手には『綿番手』、『麻番手』、『メートル番手』があります。

恒重式番手は、基準の重さあたりの糸の長さを計算したもので、数値が大きいほど細く、小さいほど太い糸となります。

数字が大きいほうが細い糸を表し、若干ややこしいので注意しましょう。

恒重式番手は、「単位長さ÷基準質量」で表わされ、綿番手、麻番手、メートル番手それぞれの単位によって、基準となる重さ、長さが変わってきます。

それぞれの1番手を計算する方法は以下の通りです。

・1綿番手▶ 768.1m(840ヤード) / 453.6g(1ポンド)

・1麻番手▶ 274.3m(300ヤード) / 453.6g(1ポンド)

・1メートル番手▶ 1,000m / 1,000g

製品の中には、『番手』としか記載されていないものもあることから、糸の素材はしっかり確認したほうが良いでしょう。

恒長式番手

恒長式番手は化学繊維や再生繊維などの長繊維に利用され、『デニール』、『テックス』 、『デシテックス』に分類されます。

恒長式番手は、基準の長さあたりの重量を表したもので、数値が大きいほど太く、小さいほど細い糸となります。

恒重式番手とは逆となり、間違えやすいので注意しましょう。

恒長式番手は、「基準質量÷長さ」で表わされますが、デニール、テックス、デシテックスで、単位長さが異なります。

・1デニール▶ 1g / 9,000m

・1テックス▶ 1g / 1,000m

・1 デシテックス▶ 1g / 10,000m

番手で表す時のポイント

ここまで番手の種類を挙げてきましたが、番手の計算や異なる素材同士の番手の比較はどうすればいいの?という疑問がわいてくるかもしれません。

それでは実際に各番手の計算方法を見ていきましょう。

同じ素材で比較する

例えば、重さが1,000g、長さが1,000mの綿繊維があった場合、各恒重式番手で比較、計算すると、

・綿番手:0.59綿番手  [ 計算 (1,000m / 768.1m ) / ( 1,000g / 453.6g ) ]

・麻番手:1.65麻番手  [ 計算 (1,000m / 274.3m ) / ( 1,000g / 453.6g ) ]

・メートル番手:1メートル番手  [ 計算 (1,000m / 1,000m ) / ( 1,000g / 1,000g ) ]

となります。

このように、計算する番手の種類によって、同じ糸でも数値が異なることがわかると思います。

異なる素材の場合は比重を考慮する

番手が同じなら、違う種類の糸でも同じ太さなの?というと、実は糸の種類によって太さは異なります。

異なる素材同士を比較する場合は、『比重』を考慮する必要があります。

比重とは、それぞれの物質固有のもので、水の中に油を入れると油が上に浮くのは比重の違いによるものです。

同じように綿、麻、ナイロン、ポリエステルなどにも、それぞれに固有の比重があるのです。

例えば、ナイロンの比重が1.13、ポリエステルの比重が1.38とした場合、同じ100テックス糸があったとき、ポリエステルのほうが、ナイロンよりも太い繊維になります。

異なる番手の換算方法

一般的に短繊維は恒重式番手、長繊維は恒長式番手で表わされることが多いですが、恒重式番手で記載されている糸と、恒重式番手の糸の太さを比較したい…、そんな場面が出てくるかもしれません。

異なる番手の換算方法についても理解しておきましょう。

恒重式番手と恒長式番手を換算する

それでは、恒重式番手である1メートル番手を、各恒長式番手に換算していきましょう。

1メートル番手は、長さ1,000m、重さ1,000gの糸を表しています。このことから、各恒長式番手の基準長さ、重さで数値を割ると計算が可能です。

・デニールの場合

 (1,000g / 1g ) / ( 1,000m / 9,000m ) = 9,000デニール

・テックスの場合

 (1,000g / 1g ) / ( 1,000m / 1,000m ) = 1,000テックス  

・デシテックスの場合

 (1,000g / 1g ) / ( 1,000m / 10,000m ) = 10,000デシテックス 

となります。

番手から直径を推定する

糸の直径は、実際に測定することが一般的ですが、番手からおおよその直径を計算することができます。

直径を推定するためには、密度が必要になります。

それでは、実際に計算してみましょう。

・1,000テックスで、密度1.5g / cm3の糸の場合

1,000テックスは100g / 1,000mで表されます。計算をスムーズにするため、単位をcmに変えると、1,000g / 100,000cm となります。

この式を密度で割ると、以下の式で直径が計算できます。

(1,000g / 100,000cm) / (1.5g / cm3) = 0.0067 cm

このように、あくまで正確な直径ではありませんが、番手と密度がわかっていれば、直径を推定することができます。

どうしても直径が必要、というときは活用してみてください。

番手の評価方法

最後に、番手の測定方法について解説します。

糸の長さと重さを測るだけじゃないの?と思われがちですが、番手の測定方法は日本産業規格JISで決められた手法で測定、計算する必要があります。

恒重式番手と恒長式番手で、評価方法が異なるのでそれぞれ見ていきましょう。

恒重式番手の測定

恒重式番手を測定する際には、正量番手と見掛番手で、計算に用いる糸の重さの算出方法が少し異なります。正量番手は簡単にいうと、本当に正確な番手のことで、見掛番手は名前の通り、おおまかな番手のことです。

まず正量番手を計算する場合は、完全に乾燥させた絶乾質量を測定する必要があります。

そして、公定水分率 (温度20℃湿度65%における繊維内の水分率)を絶乾質量に掛けて、重さを計算します。

次に長さは、短繊維の場合は何本か糸を撚り合わせてあることが多いため、撚り合わせ本数を長さに掛けて計算します。

計算した重さと長さを利用して、各々の番手を算出します。

・メートル番手の例

メートル番手=長さ×撚り合わせ本数絶乾質量×(1+公定水分率100)

見掛番手の場合は、絶乾質量や公定水分率は使用せず、糸の重さをそのまま使用します。

さらに詳しい方法はJISL1095:2010 一般紡績糸試験方法をご覧ください。

恒長式番手の測定

恒重式番手の測定方法は、まず検尺機と呼ばれる所定の長さに糸を巻き取る機械を用いて、糸の太さに応じて決められた強さで巻き取ります。

巻き取った糸の重さを測定し、見掛番手(繊度)を計算します。

次に見掛番手に対して、公定水分率と平衡水分率を掛けて正量番手(繊度)を計算します。

・テックスの例

テックス=見掛番手×100+公定水分率100+平衡水分率

また、合成繊維の伸縮性かさ高加工糸にはB法(簡易法)という、別の計算方法が適用されます。

B法では、長さ90cmの糸を20本とり、絶乾質量を測定し、以下の式に当てはめて正量繊度を計算します。

正量繊度=1000×絶乾質量長さ×100+公定水分率100

この作業を2回実施し、平均値が番手となります。

それぞれのさらに詳しい方法はJISL1013:2010 一般紡績糸試験方法をご覧ください。

まとめ

繊維の番手についての解説は以上になります。いかがだったでしょうか。

このように少しマニアックな番手の世界ですが、意外と身近な存在だということがおわかりいただけたかと思います。

私達の着ている衣服と密接に関係しているため、同じ綿の服を探してみて、これは何綿番手かな?と考えてみるのも面白いかもしれませんね。

ソース一覧 ※適宜追記

化学繊維の用語集(https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/knowledge/word/11.html)

JISL1095:2010 一般紡績糸試験方法(https://kikakurui.com/l/L1095-2010-01.html)

JISL1013:2010 化学繊維フィラメント糸試験方法(https://kikakurui.com/l/L1013-2010-01.html)

糸の種類について(https://yuasa-yarnguide.co.jp/staffblog/437.html)