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衣服のトラブルを未然に防ぐ!繊維の染色堅牢度について知ってみよう

2023.07.28

洗濯したらすぐに色落ちした、白いシャツに色移りしてしまった、汗をかいたところが変色してしまったといった経験はありませんか?

このような衣服の色の落ちやすさや、変色しやすさなどを示すものが染色堅牢度(せんしょくけんろうど)です。

今回は染色堅牢度について詳しく解説していきます。

染色堅牢度とは?

染色堅牢度は、色の落ちにくさ、変色しにくさを表す指標です。染料が繊維にしっかりと定着しているものは染色堅牢度が高くなります。

染料は、洗濯や日光、摩擦などによって変色、退色が起こることから、染料と繊維の相互作用の強さが重要になってきます。

染色堅牢度は、衣服を購入し利用する人にとって重要な指標のひとつになります。

例えば、何回洗濯しても色が抜けない、運動しても擦れた場所が変色しない、同じ色のまま長期間使えるなどは、消費者にとって大切な衣服の特徴になります。

そのため、繊維メーカーや染色メーカーにとって、染色堅牢度は非常に重要な繊維の評価項目になります。

繊維を染色するメカニズム

繊維の染色は、染料と親和性のある繊維分子に吸着することで起こる現象です。

一般的に染色は、前処理、染色操作、汚れの除去、後処理という流れで行われます。

前処理では、繊維の汚れを落とし染料を吸着させやすくするために行われ、水での洗浄や化学処理が行われます。

次に水または溶剤に染料を溶解させ、その中に繊維を浸漬し、使用する染料や繊維の性質に合った温度やpHで染料を浸透させます。

染色が終わったら、繊維を洗浄し、汚れや余分な染料を取り除きます。最後に、繊維、染料の種類に応じて、染料を定着させるために、蒸気定着、熱定着、酸性処理、アルカリ処理などを行います。

染色に使用する染料は、染色する原理の違いによって、大きく3種類に分類されます。

顔料

顔料は、物理的な反射や吸着によって染色します。顔料は粉末状の物質で、繊維上に塗布して使用します。摩擦や洗濯によって色落ちすることから、衣服に利用されることは少ないです。

吸着染料

吸着染料は、その名のとおり、繊維の表面に染料が吸着することで染色します。

吸着染料の種類には、アゾ染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、カチオン染料、アニオン染料などがあります。

これらの染料は、水との親和性が高いものが多いことから、染色時は水に溶解させて利用されます。

浸透染料

浸透染料は、繊維の内部まで染料が浸透し、染色します。浸透染料の種類には、硫化染料、溶剤染料、インディゴ染料などがあります。

これらの染料は、水溶性でないものが多いことから、染色時は溶剤に溶解させて利用されます。

繊維製品が色落ち(変色・退色)する主な理由

なぜ繊維は脱色したり、変色してしまうのでしょうか。

その理由は、染料が日光や汗、摩擦や洗濯などの外部要因によって劣化、分解、脱離するからです。

次に、日光や、汗などが、どのように染料に影響を与えるのか解説していきます。

日光による変色・退色

染料は、日光によって照射される紫外線によって、光化学反応が起こり、分子の結合が切れたり、分解したり、新しい結合が形成されます。

この反応によって、染料中の発色していた分子の構造が変化してしまい、変色、退色が起こります。

また、光によって酸化反応が引き起こされ、染料が酸化してしまい、同様に分子構造が変化し、変色、退色が起こります。

汗や汗と日光による変色・退色

汗には、塩化ナトリウムや、尿素、有機酸が含まれており、染料に付着すると、染料を酸化し、変色させます。

また汗が付いたままの衣服が、鉄等を含む金属と接触すると、茶色く変色することがあります。

また、汗のついた衣類が日光に当たると、紫外線による光化学反応が促進され、染料が酸化、分解し、変色、退色が起こります。

摩擦による変色・退色

脇や、袖、裾などの、摩擦が起きやすい部位でよく変色や退色が見られるのは、布同士や物体との摩擦によって、染料が分解されたり、脱離したりすることが原因の一つです。

また転んでしまったときのように、激しい摩擦が起こった際には、摩擦熱が発生し、この熱によっても染料が分解、酸化されることがあります。

またアクセサリー類との接触時にも、摩擦が発生するため、デリケートな衣服を着る際には注意が必要です。

洗濯による変色・退色

洗濯による変色、退色は、洗剤、水質、摩擦、温度による影響が挙げられます。

洗剤は染料の種類によっては、酸化、もしくは還元反応が起こり、染料分子が分解されることがあります。

また水道水を利用する場合は、塩素を含んでいることから、塩素との反応性が高い染料では、塩素と化学反応が起こり、染料が分解、変色、退色が起こる場合があります。

洗濯時には、衣類同士の摩擦が起こることから、繊維表面に傷がつき、染料が分解したり脱離が起こることがあります。乾燥機等を利用すると、摩擦が大きくなることから、摩擦による変色、脱色が起こりやすいです。

また染料は温度によっても分解することがあるため、洗濯、乾燥時の温度が影響する可能性もあります。

染色堅牢度の評価方法

ここまで、色落ちの原因について解説してきました。

次に、実際に染色堅牢度を評価する方法について説明していきます。

染色堅牢度の評価には、先ほど解説したような色落ちの原因に応じて、複数の評価方法が存在します。

それでは早速見ていきましょう。

耐光堅牢度

耐光堅牢度試験には、試験方法が5種類ありますが、一般的には第3露光法が用いられます。第3露光法は、評価生地と、ブルースケールと呼ばれる標準生地の面積の半分を不透明覆いで覆い、紫外線を照射します。

一定時間ごとに、ブルースケールの覆いを見て、標準退色しているかを確認します。

(標準退色とは、光の照射部と未照射部の色の差が、変退色用グレースケールの4号に相当する状態のこと。)

ブルースケールが標準退色になった時に、評価生地を取り出し、2時間以上暗所に放置します。その後、ブルースケールと評価生地を並べて評価を行います。

ブルースケールは1〜8級まであり、数値が大きいほど光に対する抵抗力が高いことを表します。

使用したブルースケールと比較して、変退色は良いか悪いか、同程度かで耐光堅牢度を評価します。

さらに詳しくは、JIS L 0842、JIS L 0843をご覧ください。

汗耐光堅牢度

汗耐光堅牢度試験には試験方法が4種類あります。今回はJIS L 0888 B法 JIS人工汗液の評価方法を解説します。

まず人工汗液に評価生地を30分浸漬した後、アクリル板に生地を貼り付け、耐光試験機に取り付け光を照射します。

その後、洗浄、脱水、乾燥し、変退色用グレースケールとよばれる基準生地と比較して、汗耐光堅牢度の評価を行います。一般的には、3〜4級以上の汗耐光堅牢度が必要です。

さらに詳しくは、JIS L 0888をご覧ください。

摩擦堅牢度

摩擦堅牢度には、乾燥試験と湿潤試験の2種類があります。試験機には、2種類ありますが、通常は、「Ⅱ形」(にがた)、別名「学振形」が使用されます。

乾燥試験では、Ⅱ形摩擦試験機に評価生地を取り付け、綿布を摩擦試験機上部のアーム先端(摩擦子:まさつし)に取り付けます。そして約2Nの荷重で、100mmの距離を100回往復摩擦します。摩擦終了後、評価生地を取り出し、グレースケールと比較し、評価を行います。

湿潤試験の場合は、濡らした綿布を利用します。濡らす程度によっても結果が変わるので、濡らし方についてもJIS規格で定められています。

一般的には、乾燥状態の場合は3〜4級以上、湿潤状態の場合は2級以上の摩擦堅牢度が必要です。

さらに詳しくは、JJIS L 0849をご覧ください。

洗濯堅牢度

洗濯堅牢度には2種類ありますが、今回はA-2号試験方法について解説していきます。

A-2号試験方法では、試験専用の洗濯試験機を使用します。洗濯液は0.5%石鹸液、温度は50度、洗濯時間30分で評価を行います。

100mm×40mmの評価生地と、2種類の適当な白布を一緒に洗濯した後、評価生地と白布を取り出し、25℃の水100mlで2回洗浄した後、60℃以下の乾燥機で乾燥します。

最後にグレースケールを用いて、変退色、汚染を判定します。

一般的には変退色が4級以上、汚染が3級以上の洗濯堅牢度が必要です。

さらに詳しくは、JIS L 0844をご覧ください。

ドライクリーニング堅牢度

ドライクリーニング堅牢度試験は、クリーニングで使用するクリーニング液である、パークロロエチレンと石油系の2種類の評価方法があります。

パークロロエチレン試験では、パークロロエチレンに界面活性剤と微量の水分を加えた試験液を使用します。

試験液と、多繊交織布を付けた評価生地、ステンレス鋼球を20個を入れ、30(誤差2℃)で、30分間洗濯処理します。洗濯後、パークロロエチレンで評価生地をすすぎ、60℃以下の乾燥機で乾燥させます。

最後に変退色、汚染用グレースケールで比較、評価を行います。

一般的には、変退色が4級以上、汚染が3級以上の堅牢度が必要です。

石油系試験の場合は、工業ガソリン5号に界面活性剤と微量の水分を加えた試験液を使用します。

試験液と、多繊交織布を付けた試験試料、ステンレス鋼球20個を入れ、30(誤差2℃)で30分間洗濯処理します。その後、工業ガソリン5号で洗浄し、自然乾燥させます。

最後に変退色、汚染用グレースケールで比較、評価を行います。

一般的には、変退色が4級以上、汚染が3級以上の堅牢度が必要です。

さらに詳しくは、JIS L 0860をご覧ください。

まとめ

いかがだったでしょうか。

染色堅牢度は、わたしたちにとって衣服のトラブルを避け、長く使い続けるためにも、重要なものです。

衣服を長期間良い状態で着ていくためにも、染色堅牢度を考慮して、大切に衣服を扱っていきましょう。

ソース一覧

http://www.handjc.net/aa-enkiseisenryou.html

https://www.mukogawa-u.ac.jp/~ushida/chem.htm

https://www.mukogawa-u.ac.jp/~ushida/chem.htm

https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%B3%E6%9F%93%E6%96%99-45062

https://www.hikaku.metro.tokyo.lg.jp/Portals/0/images/shisho/shien/public/193_6.pdf

https://www.unii.ac.jp/seikatsubunka/journal/backnumber/19/19-5.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/senshoshi1960/45/7/45_7_539/_pdf/-char/ja

https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/8