日常生活や業務の中で衣服には様々な汚れが付きますが、汚れの中には皮脂や汗をはじめ、化粧品や油、機械オイル、泥など様々なものがあります。これらの汚れ物質を付きにくくするまたは、落ちやすくする性能を防汚性と呼びます。
防汚性は次のような3種類の性能に分かれます。
SG:汚れを付きにくくします。
SR:汚れを落ちやすくします。
SGR:汚れを付きにくく落ちやすくします。
目的・概要
防汚性の評価では製品が使用される環境を想定して汚染(汚れ)物質を選んで試験します。例えば、工場のユニホームで機械油への防汚性を謳いたい場合は親油性汚染物質、体操着や野球のユニホームであれば土汚れを想定して紛体汚染物質といったように選びます。
試験では生地に汚染(汚れ)物質を付着させたときの汚れの付きやすさと汚れの落ちやすさを、汚染物質の種類毎に評価します。
JISでは試験で使用する汚染物質として様々な用途を想定し、6種類の人工汚染物質が規定されています。JISの汚染物質以外にもSEKマーク(一般社団法人繊維評価技術協議会)では花粉汚れ、食品汚れについて評価する方法もあります。
JIS L 1919防汚性試験
試験片
各試験方法で必要な試験片は以下のとおり。
A-1法:120mm×100mmの試験片×3枚(白または淡色の生地)
A-2法:100mm×100mmの試験片×1枚(白または淡色の生地)
B法 :200mm×200mmの試験片×3枚(白または淡色の生地)
C法 :100mm×100mmの試験片×3枚(白または淡色の生地)
※中濃色の生地では汚染物質の色と見分けがつきにくいため試験後の判定ができない。
試験
試験布を下表の試験方法で処理する。
表1 汚染物質と試験処理方法
試験方法 | 人工汚染物質 [特徴] | 試験処理方法 |
A-1法 | 粉体汚染物質-1 [泥汚れを想定した粗い粒子を含んだ油性の汚染] | 円筒形の容器に試験片を巻いたゴム管と汚染物質を入れて密封する。ICI形ピリング試験のボックスに容器を入れ、20分間回転する。運転後、余分な汚染物質を軽くはじいて落とす。 |
A-2法 | 粉体汚染物質-2 [空気中に浮遊する粉塵を想定した細かい粒子を含んだ乾性の汚染] | 袋に試験片と汚染物質を入れて密封する。ICI形ピリング試験のボックスに容器を入れ、60分間回転する。運転後、余分な汚染物質を軽くはじいて落とす。 |
B法 | 人工汚染物質水溶液 [親水性の汚染を想定] | はっ水度試験機に試料を設置し、汚染物質水溶液100mLを散布する。1分後に汚染物質を広がらないように吸い取る。 |
C法 | 親油性汚染物質-1 [粘性の大きい親油性汚染を想定] | 平らに置いた試験片に100mmの高さから汚染物質0.1mLを滴下する。1分後に汚染物質を広がらないように吸い取る。 |
親油性汚染物質-2 [粘性の小さい親油性汚染を想定] | ||
親油性汚染物質-3 [総合的な親油性汚染を想定] |
※上記のほか、花粉汚れ試験、食品汚れ試験(カレー、ミートソース、ラー油など)が繊技協法(一般社団法人繊維評価技術協議会制定)として試験することができる。
汚れにくさ試験(SG)
表1の処理を行い、処理前と処理後の試験片の色の差を汚染用グレースケールと比較して等級判定する。
このときの判定する部位は以下のとおり。
表2 処理後試験片の判定部位
試験方法 | 判定部分 |
A-1法 | 試験片全体を平均的に判定する。 |
A-2法 | |
B法 | 色の濃い部分を平均的に判定する。 |
C法 | 同心円状の汚れの中心部が濃く、周辺部が薄い場合は周辺部を除外して判定する。 |
付いた汚れの落ちやすさ試験(SR)
表1の処理後の試験片を1時間以内にJIS L 1930 C4M法で洗濯し、平干し乾燥させる。洗濯処理に変えてドライクリーニング処理して評価することもできる。
乾燥後、汚染前の試験片と洗濯後の試験片の色の差を汚染用グレースケールと比較して等級判定する。
結果
汚れにくさ試験、汚れの落ちやすさ試験それぞれについて、所定の枚数の試験片の等級を平均し、小数以下1桁を0または5に丸める。
表3 試験結果例
生地 | 試験結果例 | 一般的な目安 |
織物 | 汚れにくさ[SG] 3.5級 汚れの落ちやすさ[SR] 4.0級 | 汚れにくさ[SG] 3.5級以上 汚れの落ちやすさ[SR] 3.5級以上 または 3.0級以上かつ、未加工布との差が1.0以上(SG/SR共通) |
編物 |
※SGまたはSRのいずれかが基準を満たしている場合は、その性能を謳うことが可能。ただし、B法のSR単独では性能を謳うことはできない。
繊技協法(花粉汚れ試験)
花粉汚れ試験は最初に、生地と花粉に見立てた粉末(擬似花粉)を容器内で振り混ぜたときの、花粉汚れの付きにくさ(SG)を標準見本と比較して判定します。
その後、付きやすさを判定した疑似花粉が付いたままの生地に衝撃をあたえて、花粉汚れの落ちやすさ(SR)を判定します。
試験片
40mm×40mmの試験片×5枚(白、淡色または濃色の生地)
※中間色の生地では汚染物質の色と見分けがつきにくいため試験後の判定ができないことがある。
試験
<汚れの付きにくさ試験>
疑似花粉と試験片を所定の方法で撹拌し、試験片に付着した疑似花粉の程度を標準写真と比較して判定する。
<汚れの落ちやすさ試験>
汚れの付きにくさ試験後の試験片に所定の衝撃をあたえ、試験片に残った疑似花粉の程度を標準写真と比較して判定する。
結果
試験片5枚について5.0級(ほとんど付着なし)~1.0級(多くの付着がある)に中間等級を含めた9段階で判定し、5枚の平均値を求める。
表4 試験結果例
生地 | 試験結果例 | 一般的な目安 |
織物 | 汚れにくさ[SG] 3.5級 汚れの落ちやすさ[SR] 4.0級 | SGが3.0級以上かつ、SRが4.0級以上 |
編物 |