衣料品では縫目部分が強く引っ張られることで縫目付近の生地糸が滑り、縫目が開くまたは完全に抜けて孔が開いたようになります。この現象を滑脱といい、滑脱しにくさを評価する試験を滑脱抵抗力試験といいます。
滑脱抵抗力が低い場合は製品を縫製する際に、
- 縫い代を大きくとる
- 滑脱防止テープを貼り付けて縫う
- 縫目を2重、3重にする
- タイトなデザインを避ける
などの対策によって、ある程度防ぐことができます。
目的・概要
織物の縫目の開きやすさ、抜けやすさを評価する試験です。
縫目に対して垂直方向に両側から生地を引っ張り、タテ方向またはヨコ方向の縫目の抵抗力を調べます。試験結果は縫目部分の糸間の開いた距離で評価するため、結果の数値が小さいほど滑脱に対して強い(糸が動きにくい)生地ということになります。
織物の縫製部分の抵抗力を調べる代表的な試験です。
JIS L 1096 B法
試験片
- タテ方向170mm×100mmの試験片×5枚
- ヨコ方向100mm×170mmの試験片×5枚
①試験片を中表にして長さの半分に折り、折目を切断する。
②切断端から縫代10mmとして規定の縫い方で表面を内側にして縫い合わせる。
試験
- 試験片の縫目を中央にして、縫目から垂直方向に所定の荷重で引っ張る。
※荷重は一般的に厚地またはボトム類は117.7N、その他は49.0N。 - タテ方向、ヨコ方向それぞれ5回の試験を繰り返す。
- 試験片を取り外し、1時間静置する。
- 生地のたるみがなくなる程度に張力をかけた状態で、糸が滑って開いた最大孔の長さを測定する。
結果
最大孔の長さについてタテ方向、ヨコ方向それぞれ5回の平均値を求める。
試験結果例
生地 | 試験結果例 | 一般的な目安 |
織物 | タテ 1.6mm ヨコ 3.4mm | 117.7N 5mm以下 49.0N 3mm以下 |
試験する生地によっては引っ張った後の縫目の状態に異常が認められることがあります。このような場合は以下のような用語が付記されます。
用語・記載例 | 外観 |
完全滑脱(67.8N以上) | 設定荷重以下で完全に滑脱し、縫代に引張方向の糸が残っていない状態。 |
生地破断(67.8N以上) | 設定荷重以下で生地が破断した状態。 |
縫糸切断(67.8N以上) | 設定荷重以下で縫糸が切断した状態。 |
試験コメント
滑脱抵抗力の試験結果、目の開きが大きい場合は縫製部分を補強するなど工夫することで対処できることもあります。縫製仕様の検討にお役立てください。
また試験結果が目安の範囲内であっても、生地によっては縫目が開いた部分が目立つ場合があります。目安にとらわれることなく生地特性に合った対応をお願いします。