織物は小さな傷や摩耗した部分に力が加わると、比較的弱い力でも生地が裂けて大きな破れにつながることがあります。この生地が裂けるときの強度を引裂強さと呼びます。
引裂強さの弱い生地は、着用中の体の動きや引掛けなどによって簡単に破れやすくなります。引裂強さ試験は織物の強度を調べる試験として代表的な試験の一つです。
目的・概要
主に織物の引裂き強さを評価します。
所定の大きさに切り出して、一辺の中央部分に切り込みを入れます。切れ目から生地を引裂いて、生地の抵抗力を測定します。タテ方向、ヨコ方向それぞれで試験を行います。
引裂強さの数値が大きくなるほど引裂に対して抵抗が強いことになり、生地の破れが広がりにくくなります。
JIS L 1096 D法(ペンジュラム法)
試験片
- 63mm×100mmのタテ方向の試験片×5枚
- 63mm×100mmのヨコ方向の試験片×5枚
試験
- エルメンドルフ形引裂試験機に試験片を取り付け、20mmの切れ目を入れる。
- 試験機に取り付けた状態で、切れ目を除いた43mmの引裂荷重を測定する。
- タテ方向、ヨコ方向それぞれ5回の試験を繰り返す。
結果
引裂荷重のタテ方向、ヨコ方向それぞれ5回の平均値を求める。
※タテはタテ糸を切断して引き裂いた場合、ヨコはヨコ糸を切断して引き裂いた場合を表す。
試験結果例
生地 | 試験結果例 | 一般的な目安 |
織物 | タテ 21.4 N ヨコ 11.7N | 厚地・ボトム 10 N以上 うす地 7 N以上 |
引き裂き試験では通常、切れ目の延長線方向に引き裂かれていきます。試験する生地によっては引き裂かれた状態が通常と異なる場合があり、その場合は以下のような用語が付記されます。
用語・記載例 | 外観 |
引裂方向に対して直角に切断 (12.3N以上) | 切れ目の方向から垂直方向に引き裂かれる切れ方。 ( )内は測定値の中での最小荷重。 |
引裂方向に対して斜めに切断 (12.3N以上) | 切れ目の方向から斜め方向に引き裂かれる切れ方。 ( )内は測定値の中での最小荷重。 |
切れ残りあり (62.7N以上) | 最後まで切れず、切断されない部分が残った状態。 主に引裂抵抗の強い生地又は伸長率が高い生地が該当する。 ( )内は測定値の中での最小荷重。 |
滑脱が生じたため、規定の試料幅切断せず(23.4N以上) | 試験布の糸が切断せずに、試験機の掴み部分から滑り抜けた状態。 ( )内は測定値の中での最小荷重。 |